私は言語学の専門家ではありませんが、改めて詳しく調べた結果、次のア〜クのようなことがわかりました。
結論から申し上げれば、方言とは基本的には関係ありません。
仮に関東が起伏・関西が平板だとしたら、過去投稿で取り上げたドラマ「アオイホノオ」は二重の意味で誤りだったことになります。
また、カによれば、まとめページで触れた「「漫画」が昔は起伏発音だった可能性」もあながち邪推ではないとわかり、うれしかったです。
ア 方言のアクセントは、大きく分けて東京式・京阪式・N型・無型(アクセン
トなし)の4種類で、全人口の約半数は東京式
(⇒参考文献②③⑤⑥⑦⑧⑨⑪⑲)
東京式
関東(栃木・茨城以外)・北海道・東北(宮城南部・福島以外)・新潟・
中部(北陸以外)・紀伊半島(吉野熊野付近)・中国・四国(宿毛付近)・
福岡・大分など
京阪式
近畿・四国・北陸の大部分、佐渡島
N型
長崎・鹿児島・熊本西部・都城・隠岐島・沖縄など
無型(アクセントなし)
東北(宮城南部、福島)・栃木・茨城・八丈島・佐賀・熊本東部・宮崎
(都城以外)など
イ 東京式と京阪式では、アクセントが逆転する語も多いが、外来語の場合は
基本的に同じアクセント
(⇒参考文献④⑤⑥⑨)
ウ 無型では、イントネーションも尻上がり傾向
(⇒参考文献⑨)
エ 外来語の名詞は、4音は平板化が顕著。3音は起伏(第1アクセント)が多
数だが、古く入った語や日常頻繁に使われる語(例:ガラス、バイト)は平板
化、省略語であるが省略意識が無いもの((例:テレビ、トイレ)は起伏(第1
アクセント)のまま
(⇒参考文献②)
オ 日本語として古い(和語→漢語→外来語)ほど平板化
(⇒参考文献⑤⑱)
カ 漢語でも、「麻雀」「電車」「電話」など昔は起伏(第1アクセント)、
「音楽」も専門家の間では60年代から平板化
(⇒参考文献④)
キ 学生への意識調査によれば、起伏のままの理由は「標準語的」、平板化
の理由は「若者的」「都会的」。どちらも放送メディアの影響ありと考え
るべき
(⇒参考文献⑨)
ク 平板化の原因は、次の通り
・ 無型アクセント地帯からの影響は考えにくい。
・ 「専門家アクセント」(その道の「通」や専門家・業界人など、その語を
頻繁に使用する人たちの間で浸透。外来語らしく響かせないことがカッコ
いい)
・ 「省エネ」(第1アクセントの場合のようにどこで音を下げるかを意識し
て声帯の緊張が高まる必要なし。その場を切り抜けるため無難に近い所で
ごまかしがきく)
(⇒参考文献④⑤⑥⑬⑮)
アクセント辞典の記述は、過去投稿でも取り上げていますが補足します。
NHK版(⇒参考文献①)の掲載基準は、NHKアナウンサー約500人へのアンケート調査を基にし、「放送で用いるのにふさわしい」「ある程度あらたまった場面で使っても、多くの人に自然に受け入れられる」「特定の地域や年代を連想させない(東京方言や若者アクセントも排除)」で、「現代における公的な場面でのことばのドレスコード」とのことです。複数併記の場合の優劣も、使用場面や聞き手によって使い分けてよい旨の解説が放送文化研究所のホームページでなされています。
三省堂版(⇒参考文献②)の掲載基準は、東京式アクセントを基準とし、「その語に馴染みのある人のアクセントを重用」「生きて使われているアクセントこそがそのことば本来の姿」とのことです。
これらの基準のもとでNHK版・三省堂版とも、「ゲーム」「ドラマ」がいずれも起伏のみであるのと違い、「アニメ」は起伏・平板の完全併記なのです。
因みに1986年発行の東京堂出版版(⇒参考文献③)では、「アニメ」は掲載が無く、「ゲーム」「映画」は起伏(東京・京都・鹿児島とも第1アクセント)のみ、「ドラマ」は起伏(東京・京都は第1アクセント、鹿児島は第2アクセント)のみでした。
なお、コミケ参加者アンケートで「出身地」「現住所」を調査していない理由は、方言は無関係と考えたことのほか、その方の発音の正確な拠り所の特定が困難だからです。例えば、「5歳まで鹿児島、22歳まで大阪、35歳の現在は東京在住」という方は、薩摩人・大阪人・東京人のどれでしょうか?あくまで生まれた場所?最も長く住んだ場所?現在住んでいる場所?それともご本人の意識次第?・・・複雑かつ無意味な質問は避けたのです。
※参考文献
https://16516tal.blogspot.com/p/blog-page_9.html
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