2018年9月2日日曜日

広島国際アニメフェス

 広島国際アニメーションフェスティバル
 広島で原則として2年に1回のペースで行われる、ASIFA(国際アニメーションフィルム協会)やアメリカのアカデミー賞も公認する、世界4大アニメーション映画祭の一つで、国際的にも評価・人気・注目度が高いアニメーション映画祭です。「広島大会」とも言われます。
 広島市が主催者(の一つ)になっており、自治体が一貫して直接主催するアワード形式(アマチュアからの応募に基づく審査・表彰形式)のアニメイベントとしては、東京アニメアワード(前身の東京国際アニメフェアなどを含めて、東京都が主催)と並ぶ貴重なイベントで、かつ、最も伝統あるイベントです。開会式・閉会式では原則として広島市長のあいさつがあります。今は4代目ですが、特に2代目の平岡敬さんはさすがマスメディア出身のせいか式典後も上映をちゃんとご覧になっていて嬉しかったですね。

 世界中から寄せられる年齢やプロ・アマ問わない作家さんたちの作品を公開審査する「コンペティション」をメインに、様々な作品が1〜2時間程度のプログラムの形にまとめられて上映されます。基本は短編(長くても30分程度)の「アート(非商業)アニメーション」作品ですが、ごく一部ですが長編の商業アニメーションも上映されます。セルなどの絵が動く「ドローイング」のほか、人形・粘土・切り紙・砂・布などあらゆる素材(果ては人間の体自身をコマ撮り)を用いた陰影のある立体物が動く「パペット」も多いです。
 作品上映だけでなく、その作家本人などが解説(いわゆるメイキング)してくれるステージもあります。今では商業アニメーションの世界的な大作家になっているような方(例:ジョン・ラセター)も過去に登壇されています。実写映画として公開される商業作品もCGが多用される傾向にあるため、まだ日本公開前にCGのメイキングとして解説ステージが設けられたこと(例:「マスク」)も多々あります。このイベントで一般世間よりも少し早く知ることができた作品・作家も少なくありません(例:イギリスの「ウォレスとグルミット」シリーズ)。初期の頃は、CG作品の上映はほぼ皆無で、CGだけの解説付き特別プログラムが組まれていましたが、今や隔世の感があります。
 また最近は、学生や無名作家の作品上映にも力が入れられており、小部屋での持ち込み自主上映やメイキング解説も多数行われています
 トークショースタイルのイベントも時々行われます。過去には、黒柳徹子さん・川本喜八郎さん・和田誠さんのトークショーや、商業アニメ界から富野由悠季さん・高橋良輔さん・出崎統さん・杉井ギサブローさん・りんたろうさんが勢揃いしての豪華トークショーや高畑勲さんの講演会などもありました。ちなみに、宮崎駿さんは、ご本人はアートアニメーションに否定的な立場を取られていますが、コンペティションで作品(日本テレビ関連のCF(CM)?)が上映されたこともあります(たぶん誰かがこっそり応募したのだと思われますが、まだ国際的には無名の頃で、上映時も大きな拍手などは起きず、何の賞も受賞しませんでした)。
 過去投稿でも取り上げた通り、初期の頃は有名人である手塚治虫さんが元気に参加されていた(第1回ではグランプリ受賞)こともあり、国内でも注目度が高くNHKが積極的に特集放送したりしていました。最近はCS(BS)のアニマックスで受賞作品の一部が放送される程度になり、話題になることもあまりないのが残念ですが、それだけ定着した証とも言えます。
 作家やゲスト登壇者やメディア関係者などの招待客も多く、それらの方々は名札を首からぶら下げておられますので、お顔を存じ上げていなくても声をかけやすかったりはします。
 作品は、コンペティションをはじめとして、一部の長編などを除き(吹替はもちろん)日本語字幕は一切ありません。最近は非英語圏の作品は作家の側で英語字幕をつけていることが多く、「ここは日本なのに」と思ったりもします。第1回でのフランスのポール・グリモー監督による完全版「王と鳥」(タイトルが色々変遷している作品で、当時の正確なタイトルは失念しましたが、昔の短縮版は「やぶにらみの暴君」として有名です。)が映画祭スタッフによる活動弁士ばりの生吹替()上映だったのが懐かしいです。
 作品上映後(エンディングも完全に終了後)には毎回必ず拍手が起きますが、本当にバカ受けしたような作品の場合にはエンディングが始まる頃に拍手喝采になることもあります(過去最高の大拍手は「ウォレスとグルミット」シリーズ第2弾「ザ・ロング・トゥラウザーズ(後の邦題:ペンギンに気をつけろ)」で、グルミットがレールを必死に継ぎ足していくシーンでは場内割れんばかりの大拍手・大歓声でした。)。イベント終了後しばらくは、一般の上映会や映画館などでも思わず最後に拍手しそうになったりします。

 今年が第17回となりますが、私自身は1985年の第1回から毎回欠かさず参加しています。もちろん仕事などの都合で全日(第1回のみ6日間、他は5日間)参加は数回しかしておらず、開会式または閉会式のいずれかを含む3〜4日間参加が多いです。今回は8月23〜27日の5日間開催ですが、そのうち3日目の25日夜のコンペティションからの参加でした。(ここ数回はこのパターンです。)
 初期の頃は、「アニメ」と言えばセルアニメのマンガチックなものしか知らない大半の大人たちに対して、「アニメは絵だけじゃないんだ、写実的なものもあるんだ」「アニメは子供向けばかりではない、大人向けの芸術もあるんだ」「映画(映像)は本来すべてアニメーションなんだ」と叫んでそれらの作品を見せつけてやりたいという衝動が大変強かったです。アニメファン第1世代の性(さが)ですかね。特に「パペット」や最先端のCGが観たくて仕方ありませんでした。コンペティションなどで「ドローイング」ばかりが続くとがっかりしたりしていました。
 
 ごめんなさい、やっと本題です。
 こういったイベントなので、基本的には「アニメーション」としか呼ばれません。広島市長のあいさつなどでも「アニメーション」「アニメーション芸術」としか言われません。「アニメ」は、日本製の商業アニメーションに限定された意味を持つものとして世界共通語となっており、「(アート)アニメーション」とは別物とされているからです。
 前述の商業アニメ関係者のトークショーや持ち込み自主上映の会場くらいですね、「アニメ」という単語が公式に使われるのは。とはいうものの、作家やゲスト登壇者や一般参加者も会場内で「アニメ」という単語を発することも当然あります。基本的には平板発音が圧倒的です(商業アニメ関係者はあの高畑勲さんを含め当然に平板でした。今回も「この世界の片隅に」プロデューサーとして最近はメディア露出も多い元・マッドハウス社長の丸山正雄さんが、小部屋でのトークショーでしっかり平板発音されていました。)が、たまに起伏発音が聴かれることもあります。

 今回は、偶然取材現場付近に居合わせて耳にしました。ベテランの脚本家らしい数名のグループに、新聞記者(中国新聞)数名が取材しているようでした。「普通のドラマは海外では売れない。東南アジアは良くても欧米は全くダメだ。欧米でも売れるのは、アニメ(と特撮)だけだ。アニメは再放送も多く、再放送に伴う著作権料で、著名なベテラン脚本家は大変助かっている。最近はシナリオの専門学校などでも、アニメを念頭に置いた講座が増えている。」といった内容でした。この話をされたベテラン脚本家らしき方(取材時は名札を外されていたためお名前は不明ですが、たぶん前日に会場内で名札をお見かけした◯◯さんと思われます。)が起伏(しかも「ドラマ」は平板)だったのです。他の脚本家らしき方々はきちんと平板(しかも「ドラマ」は起伏平板が混在)だったので、余計に目立ちました。なお、新聞記者らしい方々は(私の在席中は)発音機会はありませんでした。
 脚本家さんは、アニメ業界人ではありませんが、ある意味(アニメ中心の方は特に)業界関係者とも言えます。平板発音の方ばかりではないのは気がかりです。ベテランのアニメ脚本家として有名な辻真先さんも、アニメブームの頃のラジオのアニメ情報番組でしっかり起伏だったので(当時は特に大変違和感があったため)印象に残っています。アニメ業界人であるプロデューサーや監督さんたちとも交流はあるはずなので、脚本家の皆様方も意識していただければ幸いですと思うしかありませんが
 

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