コミケに参加するなど「アニメ」に何らかの積極的な興味や関わりを持つ方々(いわゆる「こちら側」の方々の一部)において、「アニメ」という単語が現在実際にどう発音されているかを把握し、かつ、関係性が深い他の単語の発音と比較することにより、「アニメ文化」に対する意識・認識の現状の一端を確認することです。
◯概要
実施日
2016年12月29〜31日(コミケ91)
2017年 8 月11〜13日(コミケ92)
2017年12月29〜31日(コミケ93)
2018年 8 月10〜12日(コミケ94)
対象 (母集団)
コミケ参加者(上記4回分のみ)
※スタッフ及び企業は対象外
対象(抽出層)
下表に掲げるジャンルの一般参加者及びサークル参加者
なお、サークル参加者については、次の条件で抽出
① 私(TAL)が直接訪問し頒布物を入手したサークルのうち、
現在までに、アニメに少しでも関係する部分があるか、同人論
・オタク論・隣接分野(漫画、ゲーム、特撮、キャラクターイラ
ストなど)のいずれかに関する頒布物を発行したことがあるサー
クルのみ
② サークル代表または関係者(当日協力者を含む)個人
③ 完売または全て購入済みなどのため入手できる頒布物が無い
場合も、状況により実施
④ 下表中「特定サークルのみ」のジャンルは、まとめて1つの
「その他」ジャンルとみなすことで対象化
抽出方法
一 般 :参加者が机上バインダー内の用紙に任意で記入
サークル:任意抽出しiPad画面で参加者又は私が直接入力
回答者数 434名+私(TAL)本人=435名
◯質問項目以下の1点のみ(属性としては年代のみ)です。
下記添付のアンケート用紙をご参照ください。
後述の問題から、コミケ92以降は質問文を少し直しました。
コミケ91用
コミケ92・93・94用
◯回答者の属性
性別も、把握できる範囲で集計してあります。
年代は、未回答の方が4名いらっしゃいましたが、年代別内訳が元々無い項目においては集計対象に加えました。
なお、日本語に不自由ない外国人の方(中国人2か所、韓国人・フランス人・ロシア人各1か所)計5名のサークル参加者にもご協力いただきました。
◯集計結果(全体)
※より詳細な集計は、末尾にまとめました。
◯(参考)私自身の場合
ご覧のように、6つの単語の中ではっきり平板発音しかしないものは「アニメ」だけです。我ながら、アニメ文化に対する強い敬愛と誇りの表れだと感じています。
◯分析
1 年代による差
[結論]
「アニメ」に限っては、もともと平板が主流だったのに、若い世代を中心に起伏な人が主流という「世代間での逆転現象」らしきものが見て取れます。
[根拠]
年代が上がるにつれ平板な人が減り起伏な人が増えるとは必ずしも言えないようですが、「コミケ」はその傾向がかなり強いです。ただ、「アニメ」に限ってはやはり年代が上がるにつれて平板な人が増える傾向が少し見えます。
ただし、平板な人を3グループ(10代+20代、30代+40代、50代+60代以上)間でみれば、「ネット」はやや増加傾向(特に10〜20代での勘違い回答の可能性がありますが。)、「ゲーム」「映画」はやや変則的ですが減少傾向、「コミケ」「ドラマ」が減少傾向にある中で、「アニメ」だけは明確に増加傾向にあります。
平板な人を2グループ(10代+20代+30代、40代+50代+60代以上)間でみれば、さらにはっきりします。「コミケ」が明確に減少傾向、その他4種がほぼ同程度か微増になる中で、唯一「アニメ」だけが1割以上(13%)もの明確な増加傾向にあります。
2 「アニメ」の発音との親和性(同一アクセントへのなりやすさ)
[結論]
いったん平板に発音変化すれば他の単語も平板になりやすい面があることがわかります。その中で、「ゲーム」「ドラマ」は、「アニメ」に比べて、他単語からの影響による平板への変化が起きにくいと言えるかもしれませんが、「コミケ」「映画」に比べれば「アニメ」の発音との親和性は高いと言えます。
また、同一アクセントどうし(例:「アニメ」「ゲーム」とも平板)の構成比率が高いほど互い(例:「アニメ」と「ゲーム」)の発音の親和性が高いと考えられます。数えてみると「ドラマ」「ゲーム」「コミケ」「映画」「ネット」の順に親和性が高いという結果になりました。
[根拠]
他単語全体平均(各グラフ内で「(平均)」と書かれた部分)では、「アニメ」と同様に起伏な人が49%に対し、「アニメ」と同様に平板な人が66%と、平板の方が親和性が高いです。
しかし「ゲーム」に限れば、「アニメ」と同様に起伏な人が70%に対し、「アニメ」と同様に平板な人が52%と、起伏の方が親和性が高くなり逆転しています。ただし「ドラマ」に限れば、64%・67%と同程度ですが。
さらに、「アニメ」がどちらもありな人の中では、「ゲーム」または「ドラマ」が起伏の人が各々55%・45%を占め平板な人は10%・25%しかいません。
また、「アニメ」が起伏な人のうち「ゲーム」「ドラマ」とも平板な人(13%)は、「アニメ」が平板な人のうち「ゲーム」「ドラマ」とも起伏な人(22%)よりも比率が低いです。
なお、「ゲーム」の発音を基準に他単語全体平均・「アニメ」「ドラマ」との親和性を、「ドラマ」の発音を基準に他単語全体平均・「アニメ」「ゲーム」との親和性をそれぞれみてみると、「アニメ」の発音を基準にした場合とほぼ同様の傾向が見られます。ただし、どちらもありな人の中では少なくとも「アニメ」が平板な人が各々24%・19%はいます。
◯個人的感想
【形式・手法】
起伏発音するものだけに◯をつけてもらう形にも関わらず、全単語についてアクセント位置を◯や✔️で記入される方々が少なくなかったのは、予想外でした。(直接応対できた方々については便宜上認めましたが。)
また、そもそもアクセントを普段意識していない方々が多いのか、平板発音なのに「アクセントあり」と考えてしまう方々が少なからずいらっしゃいました。(特に「ネット」のアクセントを勘違いされる方が。)
質問文の表現方法について、コミケ92以降は手直ししましたが、あまり効果はなかったようです。
【内容】
「アニメ」を起伏発音される方々のなんと多いことか、ある程度予想はしていましたが、正直ショックでした。それなりにアニメ文化に親しんでいる方々でさえこうなのですから。
特に、聖地巡礼に熱心だったりハイレベルなアニメ評論誌を発行している若年層の中に起伏発音される方が相当数いらっしゃったことは、暗澹たる気持ちにさえさせられました。こういった方々にこそ理解を深めてもらいアニメ文化の「進化」のための先陣に立っていただきたい、そのためにも一層この活動を頑張らねば、とやる気が出ました。
その一方、「学漫」ジャンルを中心に10〜20代でも「アニメ」が平板発音な方々が大勢いらっしゃったことは、「さすが」と思わされると同時に大変心強くも感じました。
因みに、年代未記入の4名の方々の「アニメ」の発音は、起伏1名・平板2名・どちらもあり1名でした。
また、回答者以外のメンバーが「私は(アニメは)平板だ」とおっしゃるサークルが複数ありました。標本数が少ないためどなたが回答者になるかは結構影響がありそうなので、1サークルで複数の方から回答をいただくことも一部行なっています。
「ゲーム」「ドラマ」の一方または両方が平板発音で「アニメ」が起伏発音な方々も、やはり若年層を中心に少なからずみられました。特に「ドラマ」の平板化が予想よりも進んでおり、(ある意味最大のライバルなので)悔しい想いです。その方自身にとって今後アニメがもっと親しみの持てるものになっていってくれればうれしいなあ、と思うしかありません。起伏どうしや平板どうしなら気にならないのですが。
どの分野にどの程度関心を持つかはもちろん全く個人の自由で、他人がそれを非難したりすることはできません。ただ、最初にどの単語から平板化が始まった(または当初から平板だった)か、すなわちどの単語が主導権を握っているかは気になります。どの分野に特に興味・関心が高いのか、どの分野に日頃から馴染みが深いのか、の指標になるからです。アニメファン第1世代のわがままにすぎませんが、願わくは「アニメ」が最初に平板になり、やがて「ゲーム」「ドラマ」も平板化していったのであってほしいのです。そして「映画」のように、平板と起伏が混在しても気にならず、しかし確実に平板が増え続けていると実感できる、そんな世の中に早くなってほしいのです。
意外だったのは、「映画」を起伏発音される方々が若年層にも割と多く見られたこと、「ネット」を起伏発音される方々が1割以上もいらっしゃった(勘違いによる回答の可能性が高い)ことです。
また、若年層を中心とした「コミケ」を平板発音される方々の増加ぶりにも驚かされました。「若い世代ほど平板化しやすい」という日本語の一般的傾向の典型例と言えますね。さらに、「コミケ」の起伏発音に関しては、第2アクセント(「ミ」にアクセント)という方が若干名いらっしゃいました。関西ご出身とのことでしたが、3音の外来語由来単語としては大変珍しい発音なのでとても驚かされました。(以前NHKのドキュメンタリー番組のディレクターが、「アニメ」を第2アクセント(「ニ」にアクセント)で発音していた例があるため、予想できなくはなかったですが。)
◯集計結果(詳細)
① 各単語の年代別比較
② 各年代の単語別比較
④ 「ゲーム」の発音による関連性比較
⑤ 「ドラマ」の発音による関連性比較
⑥ 3単語(アニメ、ゲーム、ドラマ)の関連性比較
⑧ (参考)「映画」の発音による関連性比較
以 上
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