2024年10月26日土曜日

業界人 5

  アニメ業界人が出演した最近のテレビ番組について、まとめて取り上げます。


 BS−TBS系で放送中のトークバラエティー「X年後の関係者たち・あのムーブメントの舞台裏」。7月29日・8月5日放送回は「タツノコプロ」。全盛期を思い起こさせる錚々たる顔ぶれに興奮しました。笹川ひろしさん平板10回のみ、大河原邦男さん平板5回のみ(「ドラマ」も平板1回のみ)、天野喜孝さん平板6回のみ(「ゲーム」も平板4回のみ)、石川光久さん起伏気味2回・平板1回。アニメ・特撮研究家の氷川竜介さんは当然に平板6回のみ、ナレーションの局アナウンサー豊田綾乃さんは相変わらず起伏3回のみ。司会のカズレーザーさんは、起伏1回・平板7回で、最初の1回以外は徹底して平板でしたが、ゲストに合わせたのでしょう。8月12日放送回は「魔法の天使クリィミーマミ」。望月智充さんは、平板1回のみでさすがです。高田明美さんは、終盤に起伏気味1回のみ。夫である伊藤和典さんが、今回は発音機会がありませんが過去投稿では起伏気味でしたので、夫婦で影響しあっているのでしょう。司会のカズレーザーさんは、起伏平板各1回で、やはりブレがあります。

 TBS系で放送中のドキュメンタリー「情熱大陸」。10月6日放送回は京都アニメーション出身の監督山田尚子さん。当然ながら平板1回のみ。

 WOWOWプライムで10月4日放送の「劇場アニメ「がんばっていきまっしょい」公開記念特番・制作の裏側」。インタビュー出演の監督櫻木雄平さん。やはり当然ながら平板2回のみ。

 CSのAT−Xで不定期放送中の明日へのセル画」。第5・6回(9月26・27日初回放送分)は、背景美術専門の株式会社美峰に所属のお二方。谷岡善王さんは、平板5回のみ。野村正信さんは、「アニメ」の発音機会はありませんでしたが、「ゲーム」について起伏1回・平板2回でした。司会のお笑い芸人前田裕太さん(ティモンディ)は、起伏平板各1回で、最初は平板。ナレーションの声優黒沢ともよさんは、残念ながら過去投稿同様に起伏7回のみ。

 CSのAT−Xで不定期放送中の松倉家」。第9・10回(10月11・25日初回放送分)は、引き続き音響関係者2名がゲストです。音響監督の岩浪義和さんは、起伏(気味)2回・平板3回でしたが、起伏は終盤のみです。作曲家の菅野祐悟さんは、起伏3回・平板6回で、最初の2回は起伏でしたがその後は最後を除き徹底して平板でした。普段は起伏基調だがアニメ業界人の影響で平板にも馴染んでいるという印象を受けました。司会のプロデューサー松倉友二さんに発音機会がありませんでしたが、アシスタントのフリーアナウンサー八木美佐子さんが(使い回しの冒頭ナレーションを除き)本編中では久々に平板1回のみで嬉しかったです。ちなみに、「ドラマ」は、岩浪さんが起伏1回・平板2回、菅野さんが起伏1回・平板3回、松倉さんが平板1回のみでした。

 NHK教育で放送中の「ねほりんぱほりん」。司会を含む全員が人形の姿(アナログのアバター的存在)で声のみ出演する形のトークバラエティーです。ゲストは全員仮名です。10月18日放送回は「アニメ制作進行」。スタジオ出演2名、インタビューのみ4名の、実に6名の業界人が声の出演をしました。全員が20〜30代で経験年数1〜5年の若手ばかりです(激務で離職率も高い職種という面はありますが)。スタジオ出演2名のうち、20代で5年目の男性仮名ヒデアキさんは、元々アニメに興味はなかったとのことですが、起伏平板各1回で、最初は平板。30代で3年目の男性仮名ミノリさんは、「聲の形」がきっかけで業界をめざしプロデューサー志望とのことですが、驚愕の起伏6回のみ。ちなみに、「アニメーター」は、全員が平板でした。なお、ナレーションのフリーアナウンサー(70代、元NHK)石澤典夫さんは、起伏7回のみ(「アニメーター」も)。司会2名は、お笑い芸人山里亮太さん起伏3回・平板4回、タレントYOUさん起伏平板各2回で、両名とも最初は平板でした。


 総じて、業界人でさえ、平気で起伏発音ばかり披露する方が出てきている状況には、大変危惧を覚えます。ベテランの方々は当然に徹底して自然な平板発音を披露してくれますが、若手の方々は世間の悪しき状況に少しずつ侵食されつつあるのかもしれません。どうか歴史をきちんと知ってほしいですし、自信と誇りを持った自然な平板発音が徹底されないと困ります。

 (※諸般の事情により、動画投稿はありません。)

2024年10月12日土曜日

アナウンサー

 今回は、ここ半年ほどのテレビ番組の中でこれまで取り上げていない「落ち葉拾い」的な内容です。アナウンサーのみに特化するのは、実はこれが初めてです。

 ここ数年のアナウンサーは、右を見ても左を見ても、単独語としての
「アニメ」を(ひどい場合は、「アニメ制作会社」などの複合語の場合でさえも、日本語発音ルールに反して!)起伏発音する方々が大半という感じ。特に、テレビ局アナウンサーは、ひどいです。昔はそうでもなかったのに、NHK自身が発行しているアクセント辞典では起伏平板の完全併記なのに、インターネット上の無料のアクセント辞典的なサイトがあろうことか起伏のみ(「まとめ(要約版)」のコメント欄参照)なことも関係があるのか、NHK・民放問わず本当に起伏だらけという現状です。そんな中で、気になった事例が2件ありました。

 CSのAT−Xのオリジナル番組「Club AT-X」。昨年12月からリニューアルされて4種類ほどの異なる形態の番組の統一名称となっていますが、その中で声優の津田美波さん・大和田仁美さん・上田瞳さん3名が女子会トークを繰り広げる「22時のおやつ」。その3回目(「Club AT-X」としての通算第520回)の6月1日放送回。ゲストのフリーアナウンサー(元・「ウェザーニューズ」所属の気象キャスター)檜山沙耶さん(30歳)が、発音機会2回とも自然な平板発音。ちなみに、「ゲーム」は起伏発音。過去投稿にもあるように、昨年12月18日放送の「R指定アニメ」「ARIA」の回にゲスト出演された際は、発音機会2回とも起伏発音だったので、「良い方向に変わった」とも言え、大変嬉しかったです。もともとアニメ好きとのことですが、特にフリーアナウンサーさんは、アニメ特集番組での司会などの機会も多いので、今後もどうか平板発音を徹底していただきたいものです。未聴取ですが、この10月からラジオ(文化放送)で冠番組「檜山沙耶のアニウラ〜アニメの裏側を覗く」も始まったそうですので、是非ともお願いしますね。

 NHK総合で平日のみの毎日午後に放送中の報道・情報番組「午後LIVE ニュースーン」。8月30日放送回ではアニメ監督の山田尚子さんと新海誠さんの対談(録画)を特集。対談後のレポート総括(生放送)の中で、レポーターの局アナウンサー宮﨑慶太さん(推定30代)が、発音機会は1回のみですが平板発音(若干つかえた感じでしたが)。ちなみに、「映画」も平板発音。NHKの局アナウンサーが生放送とは言え平板発音してくれたのは久々だったので、意外ですが嬉しかったです。私生活では平板発音されている方なのかもしれません。ご出身の仙台市は方言として平板アクセントが基本の地域ですが、外来語由来である「アニメ」に方言はもともと無関係ですので念のため(別投稿「方言との関係」参照)。どうか昔のように、もっともっと自然に、本来の正統的な発音である平板発音を披露してくれる局アナウンサーさんが増えて(復活して)いただきたいものですね。

 (※諸般の事情により、動画投稿はありません。)


2024年10月5日土曜日

世界サブカルチャー史

 1〜4月にBS(プレミアム4Kのみ)で放送され、4〜9月にNHK教育で放送された「世界サブカルチャー史・欲望の系譜4・21世紀の地政学」。 2021年からBSで放送されてきたシリーズの第4弾は、ジャンル別に取り扱うものとなりました。「アイドル編」「ヒップホップ編」「ポップス編」「ゴシック編」「サイバーパンク編」「ゲーム編」「アニメーション編」「ジャポニズム編」の計8編が、各3回放送されました。この中で、単語としての「アニメ」の発音機会があったものをまとめて取り上げます。結果的に、ナレーション以外は大半が外国人となりました。(「ゴシック編」は、ナレーションを含めて発音機会ゼロでした。なお、「ゲーム編」は、唯一日本人ばかりとなった一方、単語としての「アニメ」の発音機会がありませんでしたが、単語としての「ゲーム」との比較について後日別途取り上げる予定です。)

 「アイドル編」では、1969年生まれのアメリカ人で東京大学大学院情報学環教授のジェイソン・カーリンさんが、平板1回のみ(日本語)。アニメ「ルパン三世・カリオストロの城」のクラリスを話題にする中での発音でしたので、アニメ好きと考えていいですね。
 「サイバーパンク編」では、1958年生まれのアメリカ人で南カリフォルニア大学教授(映画芸術)のヘンリー・ジェンキンズさんが、起伏1回のみ(英語)。実写映画「マトリックス」(アニメ「攻殻機動隊」も)を話題にする中での発音でした。
 「ジャポニズム編」では、1976年生まれのフランス人で白百合女子大学准教授(戦後日本史)のトリスタン・ブルネさんが、起伏2回・平板3回(全て日本語)で、起伏発音は最終回での最後の発言の際のみ。1964年生まれのアメリカ人でイェール大学教授(日本映画)のアーロン・ジェローさんは、平板1回のみ(英語)。1973年生まれのアメリカ人でサブカルチャー研究家(株式会社アルトジャパン副社長)マット・アルトさんは、起伏1回のみ(日本語)でした。大学で日本語を専攻したほどの方ですが、悪い影響を受けてしまっいるのかもしれませんね、残念です。ちなみに、フランス人の出版芸術家パキート・ボリノさんが、「マンガ」のみ発音機会があり、平板1回のみ(フランス語)。
 そして真打ち「アニメーション編」。「アニメ」ではなく「アニメーション」としているのは、海外作品を含む芸術としての側面もきちんと捉えようとしているからのようです。まさか直接的な発音機会(アクセント)を避ける意図があったとも思えませんし。1955年生まれのアメリカ人でタフツ大学教授(日本文化)のスーザン・J・ネイピアさんは、起伏2回のみ(英語)。過去投稿では日本語で平板発音のみだったのに、今回のように英語では辞書的な発音になるわけで、意識して日本語の場合(平板が正統的な発音)と英語の場合(起伏が辞書上の発音)を使い分けているのなら大変素晴らしいとも言えますが。1979年生まれのアメリカ人で日本のアニメスタジオ「デ・アート・シタジオ」CEOアーセル・アイソムさんは、起伏2回・平板1回(全て英語)。1982年生まれのアメリカ人で専修大学准教授(文化人類学)のパトリック・W・ガルブレイスさんは、起伏2回・平板気味1回(全て英語)で、「マンガ」も平板1回のみ発音機会あり。そして、1951年生まれの日本人で映画監督(出演者中唯一の業界人)の押井守さんは、当然ながら平板3回のみ。このほか、来日中の外国人アニメファンへのインタビューもあり、唯一発音機会があったカナダ人男性は平板1回のみ(英語)でした。

 なお、全体を通じて、ナレーションは俳優の玉木宏さん。「アイドル編」は起伏1回のみ、「ジャポニズム編」起伏12回のみ、「アニメーション編」は起伏20回・平板1回。なお、8月5日放送の「特別編・フランス興亡の60S」でも起伏1回のみ発音機会あり。「アニメーション編」は、複合語の「アニメ新世紀宣言」なども日本語の発音ルールに反して起伏発音が3回ありましたが、一方で最後の1回だけですが平板発音も披露されたわけです。過去投稿にもあるように、元々普段は平板基調の方だったようですので、NHKということで忖度(NHK側からの指導はないことは明らか)してしまったのかしれません。ちなみに、「コミケ」も発音機会があり、起伏1回のみでした。普段は馴染みのない(であろう)ものに対する自然な発音ですね。

 総じて、外国人であっても、辞書通りの発音(英語は起伏、フランス語は平板)である場合はともかく、日本在住の場合は特に起伏・平板の混在傾向が見られるなど、予断を許しませんね。ナレーションも、特にアニメが直接のテーマの場合は、変な忖度をせず、普段のご自身の発音で通していただければなあとも思います。

 (※諸般の事情により、動画投稿はありません。)