2023年2月26日日曜日

げんしけん再び

 「げんしけん」は、過去投稿(2016年12月)でも取り上げていますが、改めてその意義深さを再認識したため、再び取り上げます。

 大学のアニメ系サークル「現代視覚文化研究会」(モデルは原作者の出身である筑波大学の同名サークルで、略称「現視研」)に集う男女の、熱くもぬるい、ぬるくも熱い、青春群像劇です。原作漫画は、講談社「月刊アフタヌーン」で2002〜2006年に発表され、続編(2代目)も2010〜2016年に発表されました。最初の方と最後の方ではまるで雰囲気の違う内容になっていますが、「こういう(遅めだが)青春もあって良いのだ」と、大変共感できる内容でした。私個人も、大学でアニメ系サークルに2年間だけ入会しており、似たような雰囲気を実体験しています。なお、私自身はアニメから入りましたが、2004年と2007年に1クールずつ放送された後、2代目も2013年に放送されました。原作の全てがアニメ化されたわけではありませんが、原作に忠実でした。原作漫画の単行本も全巻所有しています。
 2002年12月単行本化された第1巻に収録された、非アニメファン(非オタク。つまり「素人」)の女性である春日部咲がそのサークル室を初めて訪れた際、「アニメ」を素人らしく起伏発音で連発する場面があります。げんしけん会員は当然に全員平板発音です。そして、原作漫画には、春日部咲のセリフの中の「アニメ」に「※」がつけられ、欄外に「咲ちゃんは"ア"にアクセントを置いてます。」と注釈がつけられていました。つまり、玄人(濃いアニメファン)は平板発音が当たり前であり、だからこそ素人である春日部咲の発音の「異質さ」を強調しているわけです。これは、少なくともこの頃(2000年代)までは、まともなアニメファンが起伏発音することは想定されていなかったわけであり、平板発音こそがアニメファン(オタク)の証明だったことの、何よりの証拠なのです。原作者の実体験(皮膚感覚)が反映されているのは確かでしょうが、世のアニメファンたち(私も含みます)の正直な感覚だったと思われます。

 ところが近年(2010年代以降)は、アニメファンを描くアニメが増加していながら、作品本編中でも大半が起伏発音になってしまっており、由々しき事態と危惧しています。現実(本物)のアニメファンたちに逆に悪影響を与えてしまっている面すらあります。何より、少なくとも平板発音が正統(昔からの伝統)であるという歴史的事実を知らない者が増えているのです。今改めて当作を取り上げるのは、前述のような原作漫画の記述(それを忠実に再現したアニメ)の意味を再確認し、現在の若い(若くない者も含めざるを得ないが)アニメファンたちに広く知ってほしいのです。当作のような良いお手本を広く知らしめる良い方法はないものでしょうかねえ。当作は、若い世代には決して知名度が高くないようなので、本当に忸怩たる思いです。

 ※原作漫画の該当頁コピーを含めた画像(音声のみ)
   著作権者 原作漫画:木尾士目、講談社
        アニメ1期:現視研研究会
        アニメ2期:コミフェス準備会


2023年2月25日土曜日

NHKアナウンサー(松本零士)

 予定を急遽変更し、投稿させていただきます。 

 つい先日、漫画家の松本零士さんが亡くなりました。かつてのアニメブーム(1977〜1985年頃)においては、メディアでの露出も大変多く、手塚治虫さんの次に顔をよく知られている漫画家だったかもしれないほどです。ただし、必ず「アニメーション」と発音されており、「アニメ」と発音されるのを聞いたためしがありません。(余談ですが、私にとっては「笑わない人」というイメージが強かったですね。この方がにこやかに笑う姿を一度も見たことがありません。真面目な印象の方でした。)
 1984年11月19〜22日にNHK教育で放送された「訪問インタビュー」に出演されていました。19日(第1回)は、「鉛筆からコンピーューターまで」と題して、翌年に開催されるつくば科学万博で上映されるオリジナルアニメ「アレイの鏡」の制作現場でインタビューが行われていました。松本零士さん(当時46歳)としても初めてコンピューターグラフィックス(CG)を一部取り入れた作品です。写真と絵画の違いや、手書きとコンピューターの違いについて、ご本人の当時の考え方が披露されており、大変貴重な記録となっています。
 インタビューは、局アナウンサーの川野一宇さんが行なっています。「アニメ」の発音機会は(全4回を通じて)1回のみあり、自然な平板発音をされていました。この当時は、NHKに限らず、テレビ局のアナウンサーでも平板発音は珍しくありませんでした。これは厳然たる事実です。ところが最近は、NHKでも民放でも、若手を中心に起伏発音ばかりで、大変残念です。ごく一部のベテランは現在でも平板発音されていますが、どうして若手はそれをもっと見習わないのでしょうか。せめてアニメ関連の特集番組では、意識していただきたいものだと切に思います。


 ※「訪問インタビュー」(NHK教育)
   https://youtu.be/D0gtU79nHGw


2023年2月18日土曜日

最近どーよ!?(声優特集番組)

 最近半年間程度のテレビ番組などの感想をまとめます。今回は、声優さんを特集した地上波の番組に絞って取り上げます。

 昨年12月20日に日本テレビ系で放送の「踊る!さんま御殿‼︎ 3時間スペシャル」。ベテランから若手まで錚々たる声優さん9名が出演し、うち4名に「アニメ」の発音機会がありました。榎木淳弥さん春川芽生さん森久保祥太郎さん平板1回のみ、大橋彩香さん起伏1回のみでした。森久保祥太郎さんは、以前は起伏発音ばかりだったのが、平板発音もされるようになり、今回は平板だったわけです。大変良い傾向で嬉しいです。一方で、大橋彩香さんは、以前からずっと平板発音ばかりだったはずなのに、この番組の環境の中で声優側では唯一起伏だったわけです。ショックでしたし、どうしてなのか理由を知りたいくらいです。以前のような平板発音に戻っていただきたいものです。なお、司会の明石家さんまさん平板4回のみ、ゲストの市川紗椰さん平板2回のみで、お2人とも以前と変わらず平板発音が徹底しておりホッとしました。今後も変わらないでいていただきたいものです。ゲストの宮田俊哉さんは、起伏3回・平板1回で、久しぶりに平板発音も聴かれました。この番組の環境に影響されたのかもしれませんが、是非とも平板発音に馴染んでいただき、テレビなどでの露出も多いので自信を持って積極的に平板発音をするようになっていただければ、と切に願っています。

 1月4日にテレビ朝日系で放送の「世代声優が選ぶ! 昭和アニメのスゴい声優50人はこれだ!SP」。ベテラン中心のさらにすごい声優特集番組で興奮しました。発音機会があった声優さんは若手(Z世代側)の阿座上洋平さん1名のみでしたが、平板気味1回のみでした。意外でしたが嬉しかったです。ナレーションを担当した声優の松岡禎丞さん佐倉綾音さんは以前と変わらず徹底して起伏発音でしたが、このようなアニメ関連番組では是非とも平板発音してみていただきたいと思います。なお、ゲストの一般芸能人のうち、世界(EXILE)さん起伏1回のみ、川島明さん起伏平板各1回でした。川島さんは、アニメにも理解がある方なので、自信を持って平板基調を強めていただければと感じています。

 日本テレビ系で放送中の「アナザースカイ」に昨年11月4日に、NHK総合で放送中の「あさイチ・プレミアムトーク」に昨年12月16日に、声優の梶裕貴さんが顔出し出演されました。過去投稿にもあるように、基本的には起伏発音なのですがたまに平板発音もされる(つまり起伏「基調」の)方です。前者では、起伏6回・平板1回でした。ナレーションの声優バッキー木場さんが、過去投稿にもあるように徹底して平板発音の方ですが、引きずられることなくしっかり平板1回でホッとさせられました。むしろ、梶さんの方にこそ、もっと意識して平板発音に変えていただければなあと感じました。後者では、残念ながら起伏5回のみでした。司会の博多大吉さん平板3回のほか起伏気味2回(うち1回は「ニ」にアクセント)、博多華丸さん起伏気味1回(「ニ」にアクセント)、局アナウンサーの鈴木奈穂子さん起伏1回でした。大吉さんや華丸さんは、過去投稿では平板だったので、どうか変な影響で変わらないでいただきたいものです。

 総じて、声優さんは、露出も多く、世間一般的にはアニメ業界関係者としてみられるので(番組共演者に対しても含めて)影響力が大きいですから、「アニメ声優」としての出演時には発音をくれぐれも意識していただきたいものです。

 (※諸般の事情により、動画投稿はありません。)





2023年2月4日土曜日

素人 4

 最近半年間程度のテレビ番組などの感想をまとめます。今回は、アニメ業界とは直接関係のない方々(いわゆる「素人」。司会者を除く。)を取り上げます。

 昨年12月13日に、アニメ歌手水木一郎さんの訃報が流れ、ニュースやワイドショー番組で特集されました。その中で、テレビ朝日系の「羽鳥慎一モーニングショー」で、「素人」の発音機会がありました。元フジテレビアナウンサーの弁護士菊間千乃さんは残念ながら起伏発音でしたが、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さんが自然な平板発音をされていました。同番組では、ナレーションの声優四本木典子さんが、徹底して起伏発音(発音機会3回)だったのが残念です。また。映像が紹介された2002年放送の「徹子の部屋」出演時に、司会の黒柳徹子さん(いつも起伏発音)に引っ張られたのか、現在まで基本的に平板発音が徹底している水木一郎さんが発音機会3回中2回は起伏発音だったのがショックでしたが、その場の司会者につい合わせてしまっただけだと理解しています。
 CSのAT−Xで放送中のアニメ情報番組「Club AT-X」。今年1月7日初回放送の回では、作家で動物研究家のパンク町田さんが、自然な平板発音を連発(発音機会4回すべて)されていて、とても嬉しくなりました。その際司会の吉野裕行さんも堰を切ったように平板発音を連発(発音機会5回すべて)されたので、気が合ったのかもしれませんね。
 また、機会があって視聴することができたテレビ愛知制作の「データで解析! サンデージャーナル」では、昨年8月7日本放送の「ローカル鉄道事情」特集回で、三重県北部の三岐鉄道の社員野原浚大さんが、発音機会が1回あり、自然な平板発音でした。鉄道むすめを生かした取り組みの紹介場面だったのですが、アニメ作品ではありませんがアニメ的デザインのため触れられたのだと思われます。何だかとてもホッとさせられました。

 以上のように、素人の自然な平板発音を耳にすると、玄人が発音する場合以上にホッとさせられますね。「アニメ」の平板発音が広く深く浸透している証明であり、未来に希望を失わずにいられます。本来は、玄人の側にこそもっと安定して平板発音を聞かせていただきたいのが正直な想いですが。

 (※諸般の事情により、動画投稿はありません。)