権利関係の問題などから制作中止に追い込まれたりするシビアな物語でしたが、ものづくりの苦労と喜びを誠実に描いた良作で、期待を裏切らない内容でした。テレビ版の登場人物たちも大半が顔見せしており、ミュージカル仕立てや、ピーエーワークスらしからぬマンガチックな動きのシーンもあり、楽しい画面作りもされていました。
単語としての「アニメ」の発音については、触れざるを得ません。
水島努監督(音響監督も兼任)や堀川憲司・永谷敬之両プロデューサーを信じていましたので、事前に何も働きかけたりはしませんでした。これらの方々の指導が及ばないであろうCF(CM)では(あろうことか宮森あおい役の木村珠莉さんまでもが)起伏発音されていることがあるため、内心は戦々恐々でした。
いざ蓋を開けてみると、発音機会のあるキャラは予想よりも(尺の関係で当然とはいえテレビ版よりも大幅に)少なかったです。大半がきちんとした自然な平板発音で、ホッとさせられました。遠藤亮介作画監督の妻(声優は橋本ちなみさん)とラジオ番組のアシスタント(声優は高橋李依さん)が各1回発音機会があり、いずれも起伏発音でしたが、素人という位置付けの役柄でしょうから仕方ありません。その一方、丸川正人・元社長(声優は高木渉さん)が1回を除き起伏発音を連発され、木下誠一監督(声優は檜山修之さん)までもが1回だけですが起伏発音されたのは、大変衝撃でした。ご両名ともテレビ版では徹底して平板発音だっただけに。また、声優坂木しずか(声優は千菅春香さん)も、テレビリポーターを務めるシーンで起伏発音でした。
高木渉さんは、もともと起伏発音が大半の方なのですが、水島努音響監督にはきちんと指導して撮り直しをしていただきたかったです。今回のキモとも言える含蓄のある重要なシーンだっただけに、余計に残念です。アニメ業界を離れている設定だから素人扱いで大目に見た、というわけではないでしょう。因みに、モデルである丸山正雄さんは業界でも最古参クラスの大物プロデューサーです(過去投稿にもあるように直接お会いしたこともあります)が、当然に徹底して平板発音されています。作中では、それにつられてか宮森あおい役の木村珠莉さんも1回だけ起伏発音した後すぐに平板発音に戻っていましたが。高木渉さんの演技があまりに素晴らしくて録り直せなかった、というわけではないと思います。どうにかならなかったのでしょうか?大変残念です。
檜山修之さんは、よりによって過去投稿でも取り上げた「げんしけん」の主要キャラを演じられており当然に徹底して平板発音されていた方なのに、最近の若手声優などの悪影響なのでしょうか?由々しき事態です。現実のアニメ監督の中には、過去投稿でも取り上げた谷口悟朗さんのように起伏発音される方もごくごく例外ではありますが確かにいらっしゃいます。ですが、やはり撮り直していただきたかったですね。
また、千菅春香さんは、過去の他作品でも起伏発音されていましたが、ここは他の主要キャラ同様に平板発音していただきたかったですね。現実の若手声優に起伏発音の方が多いことを反映しているわけではないはずですし。
当作のようにアニメ制作自体をテーマにしてアニメ業界人を直接描く作品では細心の配慮が欲しいことから、あえて苦言を申し上げましたが、鑑賞後の感想としては「良作だったな」であることは確かですので念のため。
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