最近のアニメは、特に深夜テレビアニメや劇場作品のほとんどが、製作委員会方式によって作られています。
製作委員会は、ソフトメーカー(ビデオグラム(映像パッケージソフト)、音楽CD)が幹事(出資額も多く、総合的な窓口を務める立場)になることが多いです。その他の委員は、アニメ制作会社・テレビ局・映画会社は入らないこともありますが、広告代理店、出版社、ゲーム会社、玩具メーカー、パチンコ・パチスロメーカーなどが一般的です。最近は全くアニメと縁がなさそうな一般企業が入ることも珍しくありませんが、アニメ制作会社とビデオグラムメーカー以外は、基本的に異業種といえます。出資(または労務提供)が基本的前提のため、自治体やNPOなど非営利の組織が加わることは(私の知る限り)ありませんが。
「お金を出す」という意味では、かつての「(個々の)スポンサー」と同じような立場にありますが、著作権を共有している点が違います。製作委員会自体に法人格はありません。そのため、長期にわたると各会社の方針変更や改廃などにより委員間の意思疎通などが難しくなる面が避けられないため、コンテンツとしての各アニメ作品の将来が危ぶまれるという大きな課題もあります。(古くなった分譲マンションの建替えの問題などと同じですね。)
最近は崩れてきていますが、ビデオグラム(映像パッケージソフト)すなわち作品自体が最大の商品として位置付けられています。その点では、ある意味「作品本位」という「理想形」が実現したとも言えます。しかし現実は、各スポンサーが寄ってたかって「金も口も出す」形になったとも言え、原作付き作品ばかりでオリジナル作品が減ったとも言われます。アニメ制作会社自身が委員になっている場合はまだ良いのですが、そうでない場合はただの下請けです。製作委員会の意向には逆らえないのがアニメ制作会社ならば、そのぶん製作委員会自体がしっかりしないといけないのです。製作委員会による現場への直接指導があるのかどうかは知りませんが、現場の判断だけで制作が進行するとは限らないのが現実でしょう。
2005年頃の「電車男」ブーム以降、アニメ自体やアニメファン自体をテーマとする作品が全く珍しくなくなりました。「アニメ」という単語が本編中やCF(CM)中に登場することも珍しくありません。必然的に「アニメ」という単語の発音を意識せざるを得ないケースが激増したため、現場の判断か製作委員会の意向かはわかりませんが発音が統一されることもあり得ます。
過去投稿でも取り上げた2017年放送のテレビアニメ「アニメガタリズ」は、全キャラが起伏発音で統一されていた感がありますが、由々しき事態だと言えます。制作会社はワオワールドさんですが、製作委員会には入っていないようです。当作品の製作委員会の幹事と思われるDMM picturesさんは、新興のビデオグラムメーカー(配信もやっていますが)でゲームなどがメインのDMM.comグループの一員です。(「原作」は当グループの一員であるDMM.futureworksさんです。)「アニメ文化」についてどの程度理解がある企業なのかよくわかりませんが、過去投稿でも取り上げたように今年のアニメジャパンの会場では同社の社員の方々がきっちり平板発音されていました。なのにどうして「アニメガタリズ」では起伏発音ばかりだったのでしょうか。「原作」者の意向でしょうか。現場の判断だったのでしょうか。「通」としてのアニメファンを描く作品なので、「通」らしく平板発音させてあげることはできなかったのでしょうか。まさか「アニメファンは起伏発音が多い」などと勘違いされていたのでしょうか。
製作委員会方式の今日のような隆盛のきっかけとなったのは、1995〜1996年本放送のテレビアニメ(本放送は夕方、再放送は深夜)「新世紀エヴァンゲリオン」です。それ以前も製作委員会方式の作品はありました(1984年公開の「風の谷のナウシカ」など)が、当作品の深夜再放送での大成功がすべての始まりでした。当作品の幹事はキングレコードさんで、中心人物は同社のプロデューサーの大月俊倫さんです。林原めぐみさんを歌手デビューさせて「声優アーティスト」の今日の隆盛のきっかけを作った人物としても有名な方です。大変矜持をお持ちの方で、「アニメ」についても常に平板発音されています。2005年放送の「BSアニメ夜話」では、声優の宮村優子さんとともにゲスト出演されており、お二人とも徹底した平板発音を披露されていました。製作委員会の中心人物はこうであってほしいというお手本のような方です。他作品の製作委員会の幹事社(多くはビデオグラムメーカー)の担当者の方々は、そしてもちろん幹事社以外の構成員(多くは異業種)の方々も、ぜひ見習っていただきたいと思います。
※BSアニメ夜話
https://youtu.be/AWB-2VM-5r0
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