2021年11月21日日曜日

2等市民

 「アニメ文化やアニメファンは「市民権」を得た」という意識・認識が拡がっているようですが、必ずしも手放しで喜べるところではないと思われます。


 去る10月、復刊ドットコムで今年復刻されたSF小説『残された人びと』(アレグザンダー・ケイ著)を初めて読みました。
 NHK初の30分セルアニメのシリーズで、宮崎駿が初めて監督したテレビアニメシリーズである、「未来少年コナン」の原作(というより原案)として有名です。私の歴代テレビアニメランキングで6位に位置する大好きなアニメで、コミケでのシリーズ本発行前に通読しておくべきと考えて読んだのです。
 様々な解説で言われているような、インダストリアを旧ソ連に、ハイハーバーをアメリカに見立てた、社会主義と資本主義の対立、といった感じは全くといっていいほどしませんでした。むしろ、機械化された階級制社会と自然との共存に支えられた自由・平等・対等な共同体社会との対立、もっと言えば絶対王政・封建社会と市民社会との対立、といった感じを受けました。それを特に強く感じさせた原因が「2等市民」という文言でした。

 階級制社会においては、「1等(1級)市民」「2等(2級)市民」「3等(3級)市民、または「市民」ですらない部外者」といった序列が存在し、一定の条件を満たせば等級を異動できることが多いです。つまり、何らかの努力(上級階級へのゴマスリなども含む)に報いる形で「3等、または「市民」ですらない部外者」から「2等」にのし上がれるのです。でも所詮「2等」は「1等」よりも間違いなく下等(下級)扱いなのです。それでも「2等」に進級できた者は、それを嬉々として受け入れ、「1等」に擦り寄ったり媚びへつらう態度を一層強くしたりするのです。中には、それまで自身がいたはずの「3等(または部外者)」を蔑み差別したりさえする者も出るのです。当作ではそこまで書かれていませんが、確実にそういういやらしさを持った「2等市民」が存在するであろうことを予感させます。(なお、「市民」とは、社会の構成員として権利義務が認められた存在、「市民」ですらない部外者とは、そのような当然認められるべき権利義務も持ち合わせていない(奴隷などの)存在ということです。)

 「2等市民」という概念は、「2等国民」「2等国」という概念にも通じます。かつての日本が、第一次大戦から第二次大戦の時期に、つまりいわゆる欧米列強に追いつけ追い越せと植民地主義に走った時期に、欧米諸国から、他のアジア諸国とは一線を画した「2等国民」「2等国」と見られていたことがあると言われています。「一目置かれた」と言えば聞こえはいいですが、要するにアジアの一員から欧米列強へ擦り寄った(ある意味浅ましい)行為とも言えるのです。同じ(黄色人種や東洋系民族としての)アジアの仲間を見下し、欧米に媚を売ったり、あわよくば欧米を出し抜き彼らと対等な「1等」になることさえ本気で考えていたのです。欧米列強の「1等」の側から見れば、「2等」は所詮「2等」にすぎないのに。

 現代日本社会では、「メインカルチャー」と「サブカルチャー」という概念があります。子供のものと思われていたアニメ・漫画・特撮などの(いわゆるオタク系)文化は現在でも「サブカルチャー」とされています。小説がメインで漫画はサブ、実写がメインでアニメはサブ、一般的撮影がメインで特撮はサブ、という観念は今でも根強いです。本来は媒体や表現形式の違いに過ぎないのに。
 「メインカルチャー」を信奉する側は、「格」の違いを持たせようとしてきたのです。「高尚な内容」「社会性を帯びた大人の芸術」などは「サブカルチャー」には描けない・取り扱えないとみなしてきたのです。「子供向けや低俗で猥雑なものがふさわしい」とみなしてきたのです。
 もう、「メイン」とか「サブ」とかいった階級的概念はやめませんか。媒体や表現形式による特性の違いはある程度ありますが、取り扱う内容にはもはや「メイン」「サブ」の違いはないのです


 長くなりましたが、要するに現在のアニメ界やアニメファンは、2等市民」としての「市民権」を得ているに過ぎないのかもしれないのです。
 アニメに無関心だったりアニメをバカにしたりしてきた人々(アニメ文化に関する「素人」)は、「アニメにも良いもの・面白いものはあるね」と一目置いてくれただけで、結局は「でもやっぱり、観るなら実写だよね」「実写の方が、大人の注目度は高いし、結局実写に関われるなら関わりたいと考えているんでしょ」と見下す態度は残っているかもしれないのです。
 昔からアニメをバカにしてきた「大人」たちの象徴が「アニメ」の起伏発音だという歴史的側面がある以上、起伏発音する人々からの同調圧力に負けて平板発音をやめ起伏発音になびくとしたら、そのような卑下した態度をとった結果「居心地の良いぬるま湯的な空気」で満足してしまっているとしたら、実に嘆かわしいことなのです。所詮「1等市民」から見下された「2等市民」でいることに気づきもせず、あるいは気づいても「だって所詮アニメは実写よりも下だもの。どうせなら実写に関われる方が社会的認知度もステイタスも高いもの」と「2等」を受け入れてそこに留まってしまっているだけなのです。かつては「市民ですらない部外者」だったのがようやく「2等市民」に格上げされただけなのです。
 昔から「玄人」「匠」「通」の発音として定着していた平板発音が肯定され、卑下したりせず堂々と、自信と誇りを持って自然に平板発音し続けられる状況であってこそ、「1等」「2等」といった階級を打破した真の平等な社会と言えるのです。人々の意識・認識が心底「アニメも実写も漫画も小説も、媒体や表現形式の違いだけで本質的には対等な、いずれも素晴らしい芸術文化」となる状態が、早く訪れてほしいものです。もちろん、個々人でみればそういう意識・認識に既になっている方々も少なくないとは思いますが、「(所詮アニメは日陰者だと)卑下してしまう方々」「(一般世間に抵抗なく受け入れてもらえるように)平板発音をやめ起伏発音に変えてしまう方々」が現実にいる以上、まだまだと言わざるを得ないのです。

(※今回の投稿内容に合わせて、「まとめ」ページにも少し補記しました。コミケ99で頒布する冊子(合本再構成完全版)も同様に、内容を捕捉しました。)


2021年11月12日金曜日

コミケ当選7回目

  東京ビッグサイトで開催されている世界最大の同人誌即売会「コミックマーケット」。今冬のコミケ新99に、サークル参加が無事決定しました。前回は落選で旧知のアニソン関連サークルさんに委託参加しましたが、幻に終わったコミケ98では復活(当選)しており、今回も復活(当選)できました! 初申込から通算7回目の直接参加(委託も含めれば8回連続)です。
 会場が広くなったとはいえ、2日間開催で、かつ、新型コロナウイルス対策の影響でサークル総数はたったの2万(従来の6割程度)ですから、落選しても当然だったわけですが、本当にホッとしました。しかし、東地区と西・南地区とで完全に区分されて行き来は原則禁止とは・・・一般参加日は両地区別々にリストバンド型チケットが必要で、サークル参加日でも行き来できるかどうか不明なのは困りものです。幸い、ざっくりとカタログチェックした結果、一般参加日(1日目)はめぼしいサークルは東地区のみでほぼ完結していますし、サークル参加日(2日目)も西・南地区にあるめぼしいサークルはごくわずか(今回不参加のサークルが多いため)で、行き来できなくても諦めがつく程度とわかり、一安心。結局、2日間とも東地区に入り浸ることになりそうで、サークル参加日(2日目)も案外早く自分のサークルスペースに戻れるかもしれません。


 余談が過ぎましたが、私のサークルについて説明します。

 今回も6回連続(前回の委託参加は「アニメ(その他)」ジャンルでしたが)となる評論・情報」ジャンルで、2日目(12月31日(金))2ホール「L−21bです。
 久々のほぼ島角席(いわゆる「お誕生日席」の隣)で、出入りもしやすいし、助かります。ホール全体で見ても、シャッターやトイレに近く、目の前も広い通路に面しており、かなりの余裕が持てます。人通りは多いはずですが、なにせ新型コロナウイルス対策で一般参加者も(抽選により)1日5万人程度に抑え込まれます。頒布数は、通常よりもかなり減ると思われ、通常30部は用意するところ20部程度に抑えるつもりです。左隣(お誕生日席のため斜め後ろ)はいつも近くに配置されているサークルさんですが、右隣は初めて隣同士になるサークルさんです。何とお馴染み(贔屓)のサークルさんの一つで、現役の(ナレーション系)声優さんです。声優業界のこと(新型コロナウイルスの影響などは特に)とか語り合えるかもしれませんが、早く退席されてしまうかもしれないし、当日の状況次第ですが、ちょっと楽しみだったりします。


 当日の頒布物3種(予定ではなく決定)の進捗状況は、次の通りです。
 「アニメ」の発音問題に関する評論本アニメは本当に認められたの?(アンケート結果報告付完全版)」は、既に印刷済みですが、結章(結論)部分を全面的に書き換えます。既に当ブログで公開中の内容(修正済み)
です。さらに、本論かどこかに1点だけ重要なキーワードを補足したいと考えています。内容は当ブログの次回投稿予定のテーマのエッセンスで、ある意味刺激的な文言ですが、次回(予定)の投稿をご覧ください。つまり、ほぼ全面的に印刷し直すことになります。
 個人的感想文集のシリーズ本アニメ文化とこう関わってきたでの続刊が2冊あります。
 「スタッフ編」は、海外アート系を含む監督(演出家)と制作会社(プロデューサーや企画会社を含む)がメイン。京アニ事件に関する特別コラムは、昨年3月には完成済みです。4頁にわたる長文ですが、犯人に関する情勢が年内は動きそうもないので追記はしなくて済みそうです。監督・プロデューサー・制作会社はほぼ完成済みです。海外アート系がまだですが、もう数人追加する予定で、今月中には完成すると思われます。残るは、脚本家・作画監督・美術監督・音響監督などだけです。12月24日(金)の最終印刷予定日までに時間の許す限り多く書きたいと思いますが、コラムなどの形でお茶を濁す可能性も消えていません。とにかく、今回必ず発行します。
 「作品編①」は、国産テレビアニメ歴代総合ランキングでのベスト19国産劇場アニメ歴代総合ランキングでのベスト1の、併せて20作品を(続編・リメイク・スピンオフや劇場版・OVAも含めて)取り上げます。こちらを優先して作業しましたが、特別コラムを除き完成しています。全話再鑑賞した上で感想をまとめたので、本当に時間がかかりましたが、今年1月末に無事完成しています。特別コラム(2頁分)は、「キャンディ・キャンディ」の著作権に関する私見を述べるものですが、この土日で書き上げるつもりです。それが済めば、本当に全て完成です。コミケ当日までに補記・微修正したい内容が発生しないとも限らないので、印刷は12月下旬までしない予定です。

 なお、サークル配布限定だった別紙付録「TAL版勝手にアニメ大賞」(2021年冬版)は、一般参加者にも配布する方向で検討中です。これも、作っていてとても楽しい資料なので、近日中に手がけるかも。
 発行済みの第1弾(声優編)・第2弾(音楽編)も、欠席などでまだお渡ししていない一部のサークルさんには配布するつもりですが、ざっくりとカタログチェックした限りでは対象サークルさんは皆無に近い(ほとんどが不参加)です。

 因みに、次回夏コミ発行予定の「作品編②」も、既に10作品近く書き上げています。もちろんまだまだ作品数は増えますが、その次の「作品編③」との割り振りをどうするかは悩みの種です。両方とも、来年中には発行するつもりです。

2021年11月7日日曜日

「アニメ」と「ドラマ」

   「アニメ」に対する概念として「実写」がありますが、劇場作品以外はジャンルとして「ドラマ」と呼ばれます。テレビ番組としても単語(概念)としても「アニメ」よりずっと古くからあります。どちらも外来語(英語)が元になっています。しかし、アクセント辞典では現在でも、「アニメ」は起伏平板の完全併記となっていますが、「ドラマ」は起伏のみです。

 ご存知のように、業界筋や一部のドラマ好き(ドラマフリーク)の間では、「ドラマ」を平板発音する方々が多いです。1990年代の「トレンディードラマ」が流行した頃から業界関係者(プロデューサー、ディレクター、俳優など)の間で使われ始めたのです。現在でも、アナウンサーはじめ大半の素人(業界関係者以外)は起伏発音が当たり前ですが。

 そのため、俳優さんなどは特に、「ドラマ」をつい平板発音してしまう例も見受けられます。NHK-BSプレミアムで放送中の「アナザーストーリーズ」。10月12日放送の「愛の不時着〜国境を越えた大ヒットの秘密」。話題になった韓国ドラマ「愛の不時着」を取り上げた回です。俳優で司会(ナビゲーター)の松嶋菜々子さんは、発音機会8回のうち3回は平板でした。つい普段の調子で発音してしまったという感じでした。一方、同じ俳優でナレーションの濱田岳さんは、同程度の発音機会で徹頭徹尾起伏発音でした。ナレーションの立場として意識して起伏に徹したのかどうかは不明ですが、特に指導があったとは思われません(過去に平板発音されたことがあった記憶があります。ご本人に意識の変化があったのでしょうか
?)。なお、韓国人インタビューの吹替声優は、女性を担当した方は起伏のみでしたが、男性を担当したお一人が起伏平板が半々でした(この方の場合「アニメ」をどう発音されるのかとても気になります。)。
 「結局は個人」なのでしょうが、松嶋菜々子さんは昔のアニメ業界を題材にした2019年の連続ドラマ「なつぞら」に、濱田岳さんは1980年代のアニメ業界などを目指す若者を題材にした2014年の連続ドラマ「アオイホノオ」に、それぞれ出演経験があります。そういった経験を踏まえて、「ドラマ」を平板発音するほどなら「アニメ」も当然に平板発音していただきたい、と願わざるを得ないです。(松嶋菜々子さんについては、過去投稿にあるように起伏発音されていました。)

 ジャンルとして「アニメ」と「ドラマ」は対等な存在です。両方を同じアクセントで発音されるなら特に問題はありませんが、どちらか一方のみを平板発音されるなら、アクセント辞典の記述や歴史的経緯に倣って、「アニメ」の方であってほしいですね。全くアニメと関わりがない方々なら仕方ありませんが、少しでも関わりを実際に持った方々の場合は特に強く思います。

 (※諸般の事情により、動画投稿はありません。)