その道の「通」。プロ(「匠」)ではないがその分野を熟知し、さらに塾考する機会も多く、そうでない者を導く能力さえある人。また、そのことを鼻にかけるような尊大な態度をとらず、時には「粋」さえも感じさせ、自然に尊敬や信頼を集められるような人。
アニメ分野においても当然そのような存在はいるはずです。アニメファンを自認する人が全てそうだとは言いませんが、あらゆる文化がそうであるように、伝承・普及・浸透の過程において自然に増えていくものだと思います。
新語の発音は、当初は冒頭などにアクセントを置く起伏発音で始まった(「アニメ」の場合は登場当初から、明確なアクセントを持たない平板発音ですが。)としても、発音機会が多い(例えばその分野のプロ)ほど、発音負荷を軽減するために次第に平板化していく例が多い(言語学的にも認められています。)です。つまり、「通」であれば平板発音になるのは自然の摂理なのです。また、特に「かっこよさ」に魅力を感じやすい若者たちは、「通」は「かっこいい存在」と感じるため、「通」に近づきたい者は進んで平板発音をしたがる傾向があることはよく知られていますね。
その文化が馬鹿にされたり低く見られたりせず他と同等の一分野として認められていれば、その文化の「通」は自然に受け入れられ一目置かれます。そしてその文化の「通」は自信と誇りを持って精進することができます。その結果として「通」を見習い「かっこいい」発音として平板発音に馴染んでいく者が増えていくのが自然の摂理で、多くの文化がたどった進化の過程なのです。
アニメ文化がその例外であっていいはずがありません。「通」としてのアニメファンを描く作品では、「通」として平板発音をさせてあげるのが自然ではないでしょうか。
過去投稿でも詳しく取り扱った「げんしけん」がそうであるように、現在放送中の「アニメガタリズ」は、そのような作品の代表例になってほしいと切に願っています。そして、アニメ100周年の今年、そのような形でアニメ史にしっかりと刻まれることが当該作品にとっても幸せなことではないでしょうか。
(※諸般の事情により、動画投稿はありません。)
この10月からBSフジなどで放送開始されたテレビアニメ「アニメガタリズ」(全12話予定、完全オリジナル)。高校のアニメ研究部を舞台にした、今まで有りそうで無かった正真正銘アニメファン・アニメサークルを直接テーマにしたアニメです。一アニメファンとしては見逃せない作品で、期待と不安の入り混じった心境で放送日を迎えました。
主演声優3人が出演するスペシャル番組と第1話の放送を見た段階ですが、不安は的中してしまいました。声優さんご本人やキャラクターの発音はやはり起伏ばかりだったのです。(監督さんはさすがに平板発音でしたが。)
最近はアニメやアニメファンを直接題材に取り上げる作品が目立って増え、本編中にも「アニメ」という単語が登場するケースが増えました。
過去投稿でも触れたテレビアニメ「げんしけん」(2004年・2007年)は、大学のアニメ関連サークルを舞台にした群像劇で、原作漫画の記述と同様、アニメファン設定のキャラクターは例外なく平板発音でした。
また、2014〜2015年に全24話放送された完全オリジナルのテレビアニメ「SHIROBAKO」は、アニメ制作会社を舞台にしたアニメ業界人の群像劇で、業界人設定のキャラクターの平板発音の徹底ぶりが大変光っていた作品でした。
なのにどうして、最近の作品は起伏発音ばかりなのでしょうか? 音響制作に携わる方々がしっかりと意識・認識して(特に音響監督さんたちが声優さんたちを)アフレコ現場で指導していないからなのではないでしょうか?そのため、声優さんはおろか、あろうことか現実の若いアニメファンたちにまで起伏発音が広まりかねない状況なのです。
アニメファンは、かつてのアニメブームの頃からずっと、基本的に平板発音なのです。そしてそのことに自信と誇りを持っているものなのです。アニメやアニメファンをストレートに中心テーマにするなら、そのような描写を心がけてほしいものです。(よもや、回を追うごとに各キャラクターの発音が少しずつ平板に変わっていく、といった高等演出を企図しているのだとすれば、逆に大変画期的ではありますが・・・)
(※諸般の事情により、動画投稿はありません。)