2022年7月30日土曜日

おたくのビデオ

 最近CSのAT−Xが昔のOVAに力を入れており、一部の局オリジナル番組も気になり、なかなか(一時的にでも)解約できない状態が続いています。去る6月26日には、1991年にガイナックスが制作した「1982おたくのビデオ」「1985続・おたくのビデオ」が放送されました(以下「正編」「続編」)。どちらも、テレビ放送はほとんどされたことが無い貴重な作品で、過去に一度は某所で視聴したことがあり、正編は中古でVHSビデオソフトを購入・所有しています。今回改めて視聴(もちろん録画保存)して、制作当時も含めた「時代性」を感じてしまいました。
 80年代前半のアニメファンの実態を赤裸々に綴った完全オリジナル作品で、「おたくの肖像」と称した実写のインタビュー映像(実際はガイナックスの社員が扮したフェイクですが、おたくとしての経験談にはウソは無いと言えます。)も挿入されます。ちなみに、OPでは極太明朝体の文字演出(庵野秀明さんが好んで使用する手法ですが、当作では監督ではなく、少し手伝っている程度の立場です。)が既になされています。以下、「アニメ」の発音状況を確認します。

 正編では、2人の主人公のうちアニメに興味のない状態からアニメオタクに徐々に変わっていった久保を演じた声優辻谷耕史さんは、発音機会2回とも起伏(「映画」は平板)でした。もう1人の主人公である元々アニメオタクであった田中を演じた声優桜井敏治さんは、発音機会は1回のみですがしっかり平板でした。田中のオタク仲間の1人で特撮系がメインの日野を演じた声優中原茂さんも、発音機会は1回のみですが、やはり平板でした。他に発音機会があるキャラはいませんでした(田中のオタク仲間では紅一点の佐藤由梨を演じた天野由梨さんは「コミケ」を起伏発音していました)。これらは、1980年代前半のオタクの当たり前の姿でした。「オタクなら平板発音が当然」という雰囲気がまだあった(「オタク」という言葉自体はまだ一般化していませんが)時代です。「おたくの肖像」に登場した5名のうち、発音機会があったのは3名。玉谷純一役の玉川純さんは発音機会2回とも平板(「コミケ」は起伏)、生田雄大役の生田雄大さんも発音機会2回とも平板(「コミケ」も平板)、ハロルド潮田役の塩入一弥さんは発音機会1回のみで唯一起伏気味でした。なお、ナレーションの声優大塚明夫さんは、発音機会は1回のみですが自然な平板発音でした。最近は起伏発音が目立つ方ですが、この頃は当然に平板発音されていたわけです。
 続編では、発音機会がグッと減ります。田中役の桜井敏治さんにのみ発音機会が1回あり、当然ながら平板でした。久保役の辻谷耕史さんは「映画」を起伏発音していました。「おたくの肖像」に登場した5名のうち、発音機会があったのは2名。一転して、赤堀修役の赤萩修さんは発音機会1回のみで起伏、村山章役の村浜章司さんは発音機会1回のみで起伏気味(「コミケ」も起伏)でした。
 なお、ED「おたくの迷い道」は、田中役の桜井敏治さんと上野美子役の井上喜久子さんがデュエットしていますが、井上喜久子さんが「アニメは最高」の部分を平板発音で歌われています。

 このように、少なくとも1990年代初頭までは、おたくと呼ばれる人々は(完全統一されているわけではありませんが)平板発音が当たり前だった、ということを忘れないでください。そして、少なくともアニメファン(おたく)という設定のキャラが登場する作品(アニメ・実写問わず)を制作したり出演したりする方々には、(昔のオタクを取り扱う場合は特に、そうでない場合も同様に)意識して積極的に平板発音していただけることを願っています。

 (※諸般の事情により、動画投稿はありません。)

2022年7月23日土曜日

素人と玄人

    アニメ業界関係者(業界人以外の声優なども含む)を「玄人」、それ以外を「素人」と位置付けていますが、最近のテレビ番組などで見聞する「素人」の発音例をいくつか挙げてみます。


 4月2日にCSのAT−Xで放送の「Anime Nova プロジェクトU−20アニメグランプリ」。公募された20歳以下の若きクリエイターたち(つまり素人)が3名1組の2チーム(つまり計6名)を結成し、アニメ制作会社のバックアップのもとでオリジナルアニメーションPVの制作を競う、そのメイキング番組(同日に事前特番もあり)です。「素人」のうち3名に発音機会がありました。「株式会社原」チームの2名は、いずれも1回ずつですがしっかり平板でした。脚本担当(名古屋で映画シナリオを勉強中)の天野瑛介さん、キャラデザイン担当の芝田洸太郎さんです。アニメ制作に関心の高い人間ならば当然のことなのですが、やはりホッとさせられました。一方、「チームガーシー道場」の脚本担当の河合来実さんは、2回の発音機会いずれも起伏で残念でした。司会のカズレーザーさんは、1回の発音機会(「アニメ」「ドラマ」とも)でいずれも平板でした。司会兼アンバサダーの景井ひなさんは、2回の発音機会があり、いずれも平板でした。TikTokで人気がある方とのことで、こういう「有名素人」の方々の存在も、作今では忘れてはなりません。中には「インフルエンサー」とも呼ばれ特に若者に影響力がある方々もいらっしゃいますので、積極的に平板発音を知らしめていただければ幸いです。なお、ナレーションの声優大塚明夫さんは徹底して起伏(「映画」も発音機会1回で起伏、「アニメ制作会社」の「アニメ」も複合語なのに発音機会2回とも起伏)、テレビ東京アナウンサーの森香澄さんも2回の発音機会いずれも起伏でした。なお、業界人で唯一発音機会があった若手アニメーター(作画監督の経験もあり)の矢野茜さんは、2回の発音機会とも起伏でした。過去投稿にもあるように起伏発音が目立つ方なのですが、業界人にあるまじきことで、若い世代への悪影響が懸念されます。「素人」の頃から起伏発音していた方だとしても、業界人になれば環境などの影響で平板発音に変わるはずなのですが・・・。業界人(アニメーター)では数少ないテレビ出演機会の多い方のようなので、由々しきことです。


 6月23日にBSフジなどで放送のテレビアニメ「本好きの下剋上」総集編1のオーディオコメンタリー版(総集編2のオーディオコメンタリー版は未視聴)。原作者の小説家香月美夜さんが、4回の発音機会とも徹底した平板発音で、大変嬉しかったです。その影響もあるのか、同席した出演声優2名もしっかり平板発音。井口裕香さんは4回の発音機会全て、中島愛さんは最初の1回のみ起伏で、後の3回は平板。ゲストとも言える原作者に配慮した結果かもしれません。「素人」が「玄人」を引っ張る事例と言えますが、良い傾向です。こういう事例がもっと増えてほしいです。


 6月29日に日本テレビ系で放送の「有吉の壁〜アニメ・ゲーム専門学校でボケまくり」。元・猿岩石のお笑い芸人有吉弘行さんが司会で、お笑い芸人たちが色々な場所(特定の建物内など)で入れ替わり立ち替わりコントなどを披露するバラエティー番組です。専門学校名は不明でしたが、起伏発音される芸人さんと平板発音される芸人さんが半々(起伏平板の混在はゼロ。司会の有吉弘行さんは発音機会無し)という感じで、少し希望を持ちました。平板発音されたのは、マヂカルラヴリーのお1人(芸名不詳)が3回全てのほか、蛙亭イワクラさんチョコレートプラネットのお1人(芸名不詳)さらば青春の光のお1人(芸名不詳)が各1回でした。アニメ好きかどうかはともかく、やはり平板発音はお笑い芸人の世界でも普通のことであることの証明ですね。


 7月3日にCSのAT−Xで2本連続放送の「あにめすこーぷ」。この7月から始まった月1回程度の不定期放送らしい(次回未定)ですが、本職(アニメ業界関係者ではないので「素人」)にその業種に関するアニメ作品を見せたらどんな感想を述べるか、というトークバラエティー番組です。第1回「東京リベンジャーズ」は、元ヤンキー(元不良、元暴走族など)の方々3名が出演。お笑い芸人の佐田正樹さん(バッドボーイズ)は、発音機会は1回のみですがしっかり平板でした。ヤンキーの世界でも平板発音は普通だったのかもと想像でき、とても心強いです。第2回「かげきしょうじょ!!」は、元タカラジェンヌ(宝塚歌劇団俳優)の方々3名が出演。唯一発音機会があった元花組トップスターの俳優真飛聖さん、残念ながら起伏気味に聞こえる発音でした。なお、ナレーションのテレビ東京アナウンサー相内優香さん起伏のみ、司会のお笑い芸人岩井勇気さん・声優徳井青空さんは、いずれも起伏気味(「アニメを本職に見せたら〜」のコールでは、声を揃えて起伏)でした。特に司会のお2人は、普段は平板発音が基本(徳井青空さんは過去投稿にもあるように私が知る限りいつも平板)なのに・・・まさか指導があったとは思えませんが、「素人」が主役の番組なので余計に、「玄人」寄りの方々には意識して平板発音を徹底して披露していただきたいと切に思います


 (※諸般の事情により、動画投稿はありません。)


2022年7月6日水曜日

一般芸能人 17

 少し古い情報(全て4月)になりますが、テレビのバラエティー番組での(アニメ業界関係者ではない)一般芸能人についてまとめます。

 4月12日に日本テレビ系で放送の「
踊る! さんま御殿!! 〜人生の転機を迎えた人が大集合! 。「アニメ」の発音機会があったのは俳優の南果歩さんだけですが、発音機会は1回だけですがしっかりと平板発音されました。58歳で私とほぼ同世代ですが、やはり70年代の「アニメブーム」を中学・高校生時代に体験した世代は違いますね。なお、「ドラマ」は起伏平板が1回ずつでした。それだけアニメに馴染みがある方と言う証明でしょう。ちなみに、司会の明石家さんまさんは、「ドラマ」は3回の発音機会全て起伏でした。
 4月24日に日本テレビ系で放送の「行列のできる相談所〜私のベストアニメ」。司会の東野幸治さんは、以前は平板発音もされていた方なのですが、今回も3回の発音機会全て起伏発音でした。ナレーション(氏名不詳)は、最初の2回は平板だったのにその後6回は起伏ばかりで、何か意識することがあって変えたのかもしれませんが、大変残念です。そんな中、俳優の上白石萌歌さんが、2回の発音機会いずれも平板で、好感度が上がりました。2018年のアニメ映画「未来のミライ」で主演を務めたこともあり、アニメに理解のある方のようで何よりです(姉の上白石萌音さんも、2016年のアニメ映画「君の名は。」で主演されていますが、「アニメ」の発音がどうなのかはまだ不明です。)。現在、私も視聴しているNHK朝ドラ「ちむどんどん」でも活躍中なので、一層応援したくなりました。
 4月29日にフジテレビ系で放送の仁志松本の酒のつまみになる話」。「アニメ」の発音機会があったのはお笑い芸人霜降り明星の粗品さんだけでしたが、発音機会は1回だけですが自然な平板発音でした。やはり唯一の発音者が平板発音であってくれるのは、ホッとしますし、気分良く番組を観終えることができますね。

 ひと頃に比べて、テレビのバラエティー番組(一般芸能人が大勢出演する番組)でアニメがメインテーマの番組が減った感じです。いや、いちいち追いかけなくて済むし、今の方こそが正常なのだとは思いますが、たまにアニメがメインテーマになったりすると出演者がちゃんと平板発音してくれるかどうかが気になってしまうのは相変わらずです。いつになったら、安心してスルーできるようになるのでしょうか・・・。

(※諸般の事情により、動画投稿はありません。)