2021年8月11日水曜日

CF(CM) 2

  CF(CM)は、声優やアナウンサーなど「声のプロ」の方々がナレーションする場合が大半だと思われます。単独語としての「アニメ」の発音は、私の知る限り、ここ10年ほどは起伏発音が大半(特に、「アニメ「◯◯◯」」と作品名を読み上げる場合は平板発音は皆無に近い)で、大変残念に思っています。
 ところが、その「声のプロ」の方々がしっかり自然な平板発音でナレーションされているのに久々に出会えました。4〜6月に放送されていたテレビアニメ「ゾンビランドサガ・リベンジ」の関連グッズ・イベントなどのCFで、当作出演者の声優宮野真守さんが。BSフジなどで放送中のアニメ「ぶらどらぶ」などで流れるBSフジショッピングのCFで、「ぶらどらぶBSフジ限定セット」の説明などで2回の発音機会いずれも(うち1回は「アニメ「◯◯◯」」という形の作品名の読み上げ)、同局アナウンサーと思われる方(氏名不詳)が。
 宮野真守さんは、普段から平板発音されている方ですが、CFでもそうだということで、徹底ぶりが大変嬉しかったですし、少なくとも当作に関してはスポンサー(製作委員会)サイドからの指導のようなものは一切無いことが証明されました。BSフジ局アナウンサーさん(と思われる)も、普段がどうかはともかく、アニメ関連情報番組などでのあるべき発音をきちんとされているわけで、他のアナウンサーの方々なども見習っていただきたいと切に思います。
 放送局の上層部や製作委員会の関係者などの方々には、間違っても起伏発音を指導・強制することの無いよう願います。また、声優さんなどには、普段は平板発音されているような場合は特に、CFでも変に忖度などせず堂々と平板発音をしていただきたいものです。

 (※諸般の事情により、動画投稿はありません。)

2021年8月1日日曜日

多様性?

 単独で発音する場合の「アニメ」の発音は、まとめページや過去投稿の繰り返しになりますが、各種アクセント辞典でも起伏平板の併記です。これは、「多様性」を認めているだけに一見思われがちですが、「使い分け」を勧めているというのが本当のところなのです。

 NHK版の掲載基準は、「放送で用いるのにふさわしい」「ある程度あらたまった場面で使っても、多くの人に自然に受け入れられる」「特定の地域や年代を連想させない(東京方言や若者アクセントも排除)」で、「現代における公的な場面でのことばのドレスコード」とのことです。複数併記の場合の優劣も、使用場面や聞き手によって使い分けてよい旨の解説が放送文化研究所のホームページでなされています。
 三省堂版の掲載基準は、東京式アクセントを基準とし、「その語に馴染みのある人のアクセントを重用」「生きて使われているアクセントこそがそのことば本来の姿」とのことです。
 これらの基準のもとでNHK版・三省堂版とも、「ゲーム」「ドラマ」がいずれも起伏のみであるのと違い、「アニメ」「映画」は起伏平板完全併記なのです。しかも、「映画」は三省堂版では「最近は平板もあり」という位置付けなので、無条件完全併記は(これら4語の中では)「アニメ」だけなのです。

 「方言は言葉のアクセサリー」「アクセントにも多様性が認められるべき」「無機質平板音を嫌う人もいれば、どの地域の贔屓にもならない平板音を好む人がいる」との意見が、某動画投稿サイトに見受けられました。日本語全般の一般論として
平板発音自体も一つの方言だということを忘れている意見ですし、(これも過去投稿の繰り返しですが、)  外来語のアクセントに方言は基本的に関係ありません。日本語化が浸透し日常的に馴染み深くなれば方言の影響を受けるはずとも考えられますが、例えば元々平板発音から始まったIT関連の外来語(「ネット(インターネットの略)」「Twitter」「Word」「LINE」など)が方言として起伏発音されている地域があるという話は聞いたことがありません。「アニメ」が元々平板発音から始まったという歴史的経緯からすれば、文化として浸透・深化していく中で、わざわざその単語を強く意識しなければできない起伏発音に変わっていくということは、考えられません。起伏発音者が平板発音に変わっていきこそすれ、平板発音者が起伏発音に変わっていくことも到底あり得ません。もちろん、長い文を話していく中で息継ぎの関係でつい起伏発音してしまうことはあり得ます。それでも例えば文化として定着しきっている「漫画」を息継ぎのためであっても起伏発音する方々は(外国人には見受けられますが)現代日本人では皆無のはずですし、やはり「アニメ」はまだまだ浸透しきっていない文化なのだと言わざるを得ません。

 少なくとも、アニメ文化の担い手かつ理解者であるはずの「玄人」(アニメ業界人、その他のアニメ業界関係者、濃いアニメファン)は、平板発音から始まったという歴史的経緯を尊重し、「匠」「通」としての自信と誇りを持って、正統的な発音である平板発音に徹する(もともと起伏発音だった人の場合は徐々に平板基調に変えていく)のがふさわしい姿なのです。それをしようとしない(むしろ平板発音をわざわざ起伏発音に変える)のは、歴史的経緯を知らない「無知な人間」か、知っていても今だに自信と誇りを持てずに卑下してしまい同調圧力(その場の空気)に負けている「弱い人間」なのだ、と自覚していただきたいです。
 また、前述のような「玄人」には含まれませんが後述の「素人」とも言い切れない方々、例えばアニメに関する番組やイベントの司会を務めるような方々(多くはアナウンサー)は、まずは前述の歴史的経緯(平板発音の正統性)とアクセント辞典における「使い分け」の推奨という2つの事実を良く理解していただきたいです。その上で、アニメ文化を尊重して敬意を表したり、さらにはアニメ文化の発展に微力ながらも貢献しようと本気で思うならば、積極的に平板基調に変えていっていただきたいです。
 
 「アニメ」の発音に関して「多様性(起伏でも平板でもどちらでも好きに発音して良い)」を認められるとすれば、「素人」(アニメに特に興味・関心が無かったり、アニメ文化を特別視・キワモノ扱いしている方々)に限られます。もちろん、「素人」であっても、アニメ文化の浸透・普及・深化・進化に伴い、「玄人」の平板発音に馴染んでいき、自らも平板発音が基調となっていく方々が徐々にでも増えていくのが、あらゆる文化に共通であるはずの「あるべき発展形態」なのです。

 「映画」のように、文化としてしっかり定着していながら、起伏平板が事実上混在している(「多様性」が認められている)状況は、確かに望ましいかもしれません。ですが、文化として真の意味で定着したと言えるためには、前述の歴史的経緯を誰もが認識した上で使い分けが行われていることが必要です。そして、「玄人」はあくまで平板が基本(息継ぎなどでやむを得ず起伏になってしまうことは許容)で、「素人」は平板基調かつ増加傾向であるべきだと思うのです。その結果としてならば、起伏平板が、アクセント辞典に併記され、事実として混在していても、全く問題はありません。


※なお、今回の投稿の内容なども踏まえて私の真意をより正確に伝えるために、「まとめ」ページの「結章」部分の記述を全面的に改定しましたので、そちらもご覧いただければ幸いです。