2022年12月26日月曜日

アニメの中の「アニメ」

 アニメ作品の本編中に「アニメ」という単語が出てくることは、もはや珍しいことではありません。アニメやアニメファンを直接題材にしなくても、いつ出くわすかわからないほど一般化した気配すらあります。今年2022年に本放送された作品で、いつくか例を挙げます。


 1〜6月本放送の「CUE!」では、声優事務所を舞台にした新人女性声優たちの悲喜こもごもを描いた作品のため当然に発音機会があります。実は第23・24話しか視聴していないのですが、第23話では1名(1回)のみ、第24話では5名(各1回)に発音機会がありました。その中で第24話での天童悠希役の鷹村彩花さんのみが平板でした。アニメ好きの程度が高そうな設定の役柄ではありますが、ご本人もやはり普段から平板発音されている方なのだろうと推測されます。

 1〜3月本放送の「その着せ替え人形は恋をする」では、主役である喜多川海夢役の直田姫奈さんは、第1話で起伏1回、第2話で平板1回、第10話で起伏平板各1回でした。ギャルっぽいけどコスプレ大好きな少女という役柄なので、第2話では「通」っぽい言い回しとして平板発音してくれた感じがしました。第10話が混在となったのも、元々直田姫奈さんご本人が普段は平板だからという気がしました。この手の「オタク」が主役の作品では、遠慮せずに平板発音で押し通して欲しかったと思います。一方で、もう1人の主役である五条新菜役の石毛翔弥さんは、元々は門外漢だったのが喜多川海夢に影響を受けてコスプレ衣装作りにはまっていく役柄のせいか、発音機会2回(第6話・第7話での各1回)とも起伏でした。

 4〜6・10〜12月本放送の「SPY×FAMILY」では、子供のアーニャがテレビでアニメを観たりする場面があるため、アーニャ役の種崎敦美さんやロイド役の江口拓也さんが数回発音機会がありました。ほとんど起伏でしたが、第20話の前半でロイドの「何のアニメで覚えた」という台詞のみ平板でした。普段の(素の)江口拓也さんが出たとも考えられますが、たまたまだったようにも思われます。なお、CF(CM)でも、お二人を始めダミアン役の藤原夏海さん起伏発音されており、残念でなりません。お三方でそれとなく合わせてしまっているのでしょう。そのほか、第20話の後半でも、近所のおばさん役の岸本百恵さん起伏でした。

 10〜12月本放送の「ぼっち・ざ・ろっく」では、実は本編中では発音機会がありませんでしたが、主役の後藤ひとり役の青山吉能さん(熊本ご出身ですが元・Wake up,Girls)がCF(CM)で起伏発音されていますが、10月2日BS11で放送の「ぼっち・ざ・ろっく! #宇宙 #日本 #下北沢 #放送直前特番」では「アニメ」の発音機会はなく「ドラマ」を平板発音されていたのが気になります。一方、バンドリーダー伊知地虹夏役の鈴代紗弓さんは、同番組内で自然な平板発音をされていました。(ベースの山田リョウ役の水野朔さんは、残念ながら起伏発音でしたが。)

 何が言いたいかと言いますと、「結局は個人」なのですが、若手の声優さんでもきちんと平板発音できる方々は決して少なくないのでもっと頑張っていただきたいということと、中堅やベテランも含めて、周りに遠慮することなく、普段の発音を出して良い(ただし、アニメファンや業界人などアニメに特別な関わりがある設定・役柄のキャラを演じる際は特に意識していただきたい)ということです。

 (※諸般の事情により、動画投稿はありません。)


2022年12月10日土曜日

玄人(研究者)

 「玄人」とは、アニメ業界人・アニメ業界関係者・濃いアニメファンを指す言葉として私は使用していますが、大学で講師や特任教授をされながら在野でアニメーションを研究したり評論活動をしたりされている方は少なくありません。基本的には、私のいう「玄人」(アニメの良き理解者)側と位置付けられるでしょう。
 津堅信之さんは、そんな中のお1人です。主にアニメーション史を研究されています。1990年代前半にはアニメ評論系の同人誌を執筆されていました(コミケでも頒布されていました)し、2020年には『京アニ事件』(平凡社新書)を出版されたりもしています。

 日本テレビ系で放送中の「世界一受けたい授業」。11月19日放送の「最強エンタメ2時間スペシャル」では、1時間目として「 世界が絶賛!アニメ海外ヒット年表」が特集されていました。そして、おそらく地上波のゴールデンタイムのバラエティー番組には初出演となるであろう津堅信之さんが、講師として出演されていました。最初は当然に平板発音されていましたが、途中から起伏発音を連発され、びっくりしてしまいました。最後はしっかり平板発音に戻られていましたが、全体では起伏5回・平板7回という結果でした。また、『日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと』などの著者でもある在日アメリカ人の実業家ルース・マリー・ジャーマンさんが、もう1人の講師として出演されていました。アニメ関連では昨年6月12日の放送にも出演されており、過去投稿にもあるようにとても自然な平板発音をされていたのに、今回は、前半は起伏発音、後半は平板発音になっていました。全体では起伏5回・平板3回でした。ショックでした。司会者(レギュラー陣)側では、堺正章さん起伏2回の一方、過去投稿では起伏発音のみだった上田晋也さん(くりいむシチュー)が最初の1回のみ起伏気味だったほか平板2回でした。ゲストでは、
声優の木村昴さんが以前と変わらず起伏1回のみだったほか、過去投稿で平板発音として取り上げた俳優の寺田心さん起伏1回でした。やはり一番大きいのは、通算12回とも徹底して起伏発音だったナレーションの声優落合福嗣さんの影響でしょう。それにつられて津堅さんやルースさんも起伏発音に引っ張られた感じがあります。逆に、上田さんは津堅さんに引っ張られた気もします。
 
 これは由々しき事態です。過去に自然に平板発音されていた方々が、ナレーションなど発音機会が多い者の発音に引きづられたり、他の「素人」の発音に合わせてしまう事態が、また発生してしまっているのです。大学での講義などではおそらくそのようなことはないでしょうが、テレビだと起きやすいのでしょう。こういう現象が今後も繰り返されてはなりません。「玄人」側の方々は、どうか伝統を守り自信と誇りを持って平板発音し続けていただきたいものです。

 (※諸般の事情により、動画投稿はありません。)